「うるさい!ほんと、あんたって子供だよね」
にらみつけるようにして指をさす。

 菜穂が天井を見上げながら、
「はじまった・・・」
と言って肩をすくめている。

「あのさー、大人になるってめんどくさいかどうかなんて、大人になんないと分かるわけねーじゃん。そういうの、取りこし苦労って言うんだぜ」

「はぁ?考えるくらい自由でしょ!あんたみたいに、何にも考えずにボーッて毎日過ごすより百倍マシよ」

「大人になる前に老けるぜ、おまえ」

「うるさーい!」
 
 頭に血がのぼって優斗に食いつくのを菜穂が押しとどめる。

「また夫婦のケンカがはじまった」
と周りがからかうのをひとにらみして、
「菜穂、トイレいこ」
と、教室を出て行く。