雑踏に消えてゆく後姿を見ながら、私は思う。

 私もいつか本当の恋をしたい。

 それは「あこがれ」からはじまってもいい。いつか「恋」にかわるならば。
 そんな時には、いちばんに涼子に報告をするのだ。

 きっと涼子なら、あの笑顔で、
「よかったね」
と笑ってくれるだろう。


 ふいに冷たい風が身体をかけぬけた。

 

 呪縛から解けたように、私はランドセルを背負いなおして帰り道をゆく。






「完」