小樽はそんなに広くないのか、それとも観光スポットが集まっているのかあっという間に駅前でもらった地図の最奥まで来てしまった。

 そこは来たことがない人でも一度は聞いたことがあるであろう「オルゴール館」とよばれる建物だった。中からは心地よいオルゴールの音が重なっていくつも聞こえてきた。

 広そうな建物なので、私たちは30分後に待ち合わせをすることにして各自が建物に入っていった。

 オルゴールといっても、よくある箱型のものだけではなく、写真立てやぬいぐるみ、タペストリーなどにもオルゴールがとりつけてあるものまであった。

「特に、興味ないな」

 熱心に見ている皆を置いて、私は一足先に外に出た。
 ベンチに座って缶コーヒーを飲んで皆を待つことにしたのだ。

 それにしても不思議だ、と思う。

 消えてしまった涼子が今、ここにいる。

 こうしてまた私たちのもとに帰ってきてくれた。