1時間ほどで小樽駅に電車は入った。

「なんか寒くかんじるね」
 菜穂が身体を震わせて言う。 
 降りたとたんあたたまった身体を冷気がつつみこむ。

「さ、行きましょう」
 涼子に促されて、私たちは人の多い通りへと進んだ。
 ゆるやかな下り坂の町は、向こう側に海が見えており、人は多いものの静かな町のように感じた。

 昔ながらの建築物が残っていて、歩いているだけでも観光をしている気持ちになる。ガラス細工が有名な町なのか、いたるところにガラス工芸品の店があった。

「風鈴だって、時期はずれね」
 涼子が店先のガラスでできたブタ型の風鈴を手に取る。

 チリーンとした音色が、澄み渡る空に消えてゆくようだった。

「買ってあげようか?」
 小浜がそれだけを言うのにも真っ赤な顔をして言った。

 うれしそうな涼子と店内に向かっていくのを私たちは見送った。誰もが呆れ顔だ。

「すっかり恋人同士ってかんじね」
 菜穂がうらやましそうに言う。

「ま、万事OKってこと」
 私もそう言ってみせた。