顔が赤くなるのが自分でも分かる。何か言おうと口を開きかけたが、なんでも見透かしているような英美の前では何も言えるわけもなく、私はうなだれるように鍋の中を見つめるしかできなかった。

「いい、いい。その年頃は複雑なんさ。ムリに自分の感情を押し殺さなくてもいいさ」
 手際よく煮たインゲンを水でしめながら英美は笑った。

「でも、不純ですよね。本当に涼子さんのこと心配しているのに、私ったら小浜さんにまで変な感情を抱いてしまって・・・」

「恋しているの?」

「いえ、わからないんです。いつもあこがれている人がいて、それが恋なのかどうなのかわからないんです」

 もくもくと湯気がたつなか、玄関からは興奮しているであろう男2人の盛り上がる声が聞こえる。

「カナちゃんは、恋ってなんだと思う?」

「それ、前にも涼子さんに聞かれたんですけど、その人といつも一緒にいたい、ってことだと・・・」

「じゃあ、あこがれるって何?」

「それは・・・」

 返事に詰まっていると、英美は声をあげて笑った。