英美が夕ご飯をごちそうしてくれるというので、私たちはそれに甘えることにした。小浜と優斗は玄関で涼子を待つと言い、菜穂は疲れたので休むらしく、私は英美の食事の準備を手伝うことにした。

 最初は料理のジャマになると思っていたであろう英美も、いざ私がジャガイモの皮をむきはじめるとその腕に納得したようで、あれこれ指示を出してきた。

 皮をむいたジャガイモと人参を言われるがまま炒めていると、英美が隣に立った。
 こうして並ぶと、英美は私よりも背が高かった。背筋も伸びていて、洋服を着た彼女は若く見える。

「カナちゃん、って言ったね?」

「はい」
火を弱めて、差し出された塩を入れる。

「あんた、複雑さね?」

「え?複雑ってなんですか?」
続いてボールに入れた水を渡され、それをそそぐ。

「うれしいのか、うれしくないのか複雑な表情に見えるさ」

 思わず英美の顔を見てしまう。

「歳をとると、いろんなことが見えてしまうさ。カナちゃんが小浜っちゅう人ばかり見ているのもね」