皆が見守る中、優斗が玄関に立つ。一瞬の沈黙のあと、インターホンに指を伸ばした。

 ピーンポーン

 緊張感のないおだやかな音が中で響いているのが聞こえる。


「いないのかしら・・・?」
菜穂が心配そうに声をひそめて話す。

「いや、ばあちゃんのろいから」
そう優斗が言うか言わないうちに、玄関の中から靴を履く音が聞こえて、
「はい?どちらさま」
と扉があき、初老の婦人が顔をだした。

「よ、ばあちゃん」
優斗が手を振ってにっかりと笑った。

 ばあちゃんと呼ばれた婦人は、ギョッとした顔になったかと思うと、深いため息をついてこう言った。
「やっぱ、ばれちゃったか・・・」


 この言葉を聞いて、思わず4人は目を合わせる。「ばれたか」ということは・・・。

「おや、たくさん来てくれたんだね。私は、優斗と涼子の祖母の英美です。さ、あがっておくれ」

 歳を重ねるというのは、こうもどっしりとするものなのか。突然の来訪にもかかわらず、英美はさして驚いた様子もなく私たちを中へと招きいれた。