「へへへ・・・」
 
 苦笑いしながら、真っ赤になりながら席につくと、優斗が
「あ・ほ・か」
と、口パクで言ってきた。

「うるさい」
ひそひそ声で優斗をにらみつける。


 出席をとり終わると、井上が教室を出て行った。
 1時間目は音楽だ。

 教科書とリコーダーを手にし、私はみんなに流されるように音楽室へ向かう。パタパタと菜穂が走ってきて横にならんだ。

「やっちゃったね、また聞きほれてたんでしょ?」

「うん、なんでだろ。すごく好きな声で、心地よいんだよね。毎回あの声にひきこまれちゃうんだよ」

「恋する乙女だね」

「悲しき片想いよ~」
おどけながら菜穂にもたれかかる。