ポカーンとした顔で私を見ていた菜穂が、おもむろに手を伸ばしてきておでこに手をあてて言う。

「大丈夫、熱はないみたい」



 小浜の指示どおり、スピードはあがらないまでも、車は確実に目的地に進んでいた。正直同じ市内だから、すぐに着くだろうと思っていたが、札幌は思ったよりも広いらしい。

「こんな田舎だっけか」
優斗が周りの景色を見て言う。

「もうすぐつくみたいですね。だいぶん近いです」
地図とにらめっこしながら小浜が報告する。

「コハマン、けっこう緊張してるでしょ?」
ニヤニヤと意地悪く菜穂が尋ねた。

「そ・・・そりゃぁ緊張しますよ、なんたって僕たちは今、北海道にいるんですからね」

「そうだよなぁ。ほんとに来ちまったんだよなぁ」
他人事のように優斗が笑う。

 そう、私たちは今北海道の札幌にいるのだ。涼子に会うために。

 小浜のことを考えているのは不条理といえよう。今は、涼子のことだけを考えよう。

 私は気持ちを引き締めようと、姿勢を正した。