すると、悲惨な顔つきだった遠田の顔が光を取り戻したかのようにパァーーッと明るくなると、
「わぁー、なんだかこんなに優しくされたのはじめてです~」
と満面の笑顔になった。


「ただし」
このタイミングを逃してはいけない、と私は釘をさす。笑顔のままの遠田に、私はつづけて条件をだす。
「アンケートを書く前に、2つお願いがあります」

「お願い?」

「1つめは、このままホテルへ戻ってもらうこと。そしてもうひとつは、その後、私たちをある家まで送ってほしいんです」

 優斗が、ようやく合点がいったという顔をして、
「おまえ頭いいな~」
と感心したようにつぶやく。
 そう、一旦ホテルまで戻ってから、そのまま優斗のおばあさんの家まで送ってもらおうって寸法だ。


「ね、遠田さん良いでしょう?家っていっても市内だからそんなに時間かからないし」

 いまいち状況が飲み込めていない遠田だったが、私はホテルまで戻る道をすばやく指示を出し、
「さ、しゅっぱーつ」
と宣言すると、ギアをDに入れ替えノロノロと出発しだした。