声に耳をすませると、全身にしみわたるようだ。目を閉じて、一人一人の名前を呼ぶのをただ聞く。

「山本~」

 あぁ、なんてすばらしい低音ボイス。


「山本~」

 まだ25歳なのに、なんて大人な雰囲気をかもしだす声なんだろう。


「おいっ」
隣の優斗がつついてくる。

「ちょっと、なによ、やめてよ」

 手を払いのけて、目を開くと、教室中の視線が自分に集まっている。

「?」

 
「山本、朝から居眠りとはいい度胸だな」
 井上が腰に手をあてて、私を見ている。

「あ、そか山本って私だ。すみませんっ、はい!」

 思わず立ち上がって手を上げると、みんなが爆笑した。