後部座席には3列席があったが、補助席までつかい、奥から優斗・菜穂・私・小浜の順に腰かけた。

 車が動き出すと、遠田がガイドらしく話しだす。

「今回は当社の~・・・あ、なんだっけ。当社のツアーをご利用くださいましてありがとうございました。え~と・・・あ、こっち右だ、みなさんまたのご利用を・・・いや、違うし」

 遠田の運転はお世辞にもうまいとは言えず、しゃべりながら動くのでやたらとのろい。法定速度を守っているといえば聞こえはいいが、ブレーキを踏むたびにガックンガックンとバウンドするのでロデオマシーンに乗っているようだった。

「これから行きますのは、宝石店でございます~」

「宝石ぃ?」

 優斗が座席でふんばりながら声をあげる。

「はい~。札幌は天然の石を加工する工場が多くありましてぇ、あ・・・えと、まぁそうなんですよ」

「宝石なんて興味ねぇし」

「たのしみですねぇ~。たしかこのあたり・・・」
 優斗のぼやきも聞こえていないであろう遠田がキョロキョロと周りを見回しながら車を走らせる。