「きりーつ」

　朝礼当番の声かけとともに椅子を引く音がこだまのように連鎖する。
　私は顔を通路に出して井上の姿を確認した。

　ラフなジャージ姿の井上が、出席簿を開いている。
　短い髪に、浅黒い肌。太い眉、キリッとした目。
　・・・やっぱり完璧だわ。


「れいー」

　
　もちろん礼はせずに、井上の姿をみつめる私である。

「着席」の声がするかしないうちから椅子のガタガタという音が教室に響きわたり、そしてすぐに静寂がやってくる。

「おはよう」

その通る声に思わずため息がでる。


「さぁ、いよいよ年末に近くなってきたな。テストもあるし、体調管理はしっかりな」

そう井上は微笑みながら言うと、出席をとりはじめる。