あらかた乗り終わったところで私たちもようやく機内に乗り込んだ。優斗たちは手前の通路を進むように言われ、私だけは奥側に。

 混みあう人たちをすり抜けて進むと、心配げに向こう側を歩く小浜が私をチラチラ見ているのに気づいた。

 私の席は2人がけの席の通路側だった。チケットの半券と座席番号を何度も確認する。
 「そこ?」と口だけ動かし指差している小浜に微笑んで見せて、自分の座席に腰を降ろした。小浜も軽くうなずいて見せて、そのまま奥に進んでいった。

「やさしさも、愛がなければ悲しいだけ」
ため息とともに口に出してみると、隣に座った中年男性がギョッとして私を見つめた。

「あ、なんでもないです。すみません」
と言って私はすましてベルトを締めた。

 客室乗務員が、非常時の説明をはじめるのをぼんやり見つめながら、窓の外を見ると気づかないうちに飛行機はゆっくりと進みだしていた。