あたりを見渡している小浜をそれとなく見つめる。

 それだけで、空港のさわがしさも静寂になったかのように聞こえなくなる。

 何度も繰り返した質問を自分になげかけてみる。

『これは、恋なの?』

 すぐに、『ちがうよ』と打ち消す声がきこえる。

 そう、これは恋ではないのだ。単に近くにいる対象が小浜なだけ。今までだってそうだった。井上先生の恋が終わったとたん、すぐに小浜を好きになるなんてバカげているではないか。

 何よりも、小浜は今まさに好きな人に会うために飛行機にまで乗ろうとしているのだ。

「かなうわけない」

 思わず口にしてみると、空港のざわめきが耳に再び聞こえてくる。

 そうだ。これでいいんだ。きっと、恋に恋しているだけなんだから。