空港は年末を海外で過ごす人や、帰省する家族で混みあっていた。

 はぐれないように国内線のゲートへ向かい、ようやく乗る予定の航空会社カウンター近くの椅子に腰をかける。

「いやー、疲れた。なんだかもう十分旅行したってかんじだな」
ドカッと椅子に落ちるようにして座った優斗が嘆いた。

「何言ってんの、これからじゃないの」
そう言いながら隣に腰かけようとした瞬間、菜穂の鋭い視線を視界の端に感じた私はあわてて、
「さ、菜穂も座って」
ともうひとつ隣に座った。

「あら、ありがと」
当然のように、菜穂が優雅に座った。


「チェックインはじまったみたいですから、少し休憩したら行きましょうか」

 さすが年上の功だけあって、小浜はしっかりしている。実際、空港につくまでの複雑な乗り換えも小浜が仕切ってくれたおかげでスムーズだった。