「コハマン、なんかオドオドしててはじめビビっちゃった」

「なんでもいいけど、さっさと行こうぜ。電車遅れちゃったらシャレなんない」

 言うが早く優斗はさっさと切符売り場に向かっていった。

「そうですね、行きましょうか」
小浜もあわててスーツケースをガラガラと押しながら後を追った。

「なんかさ、あの2人年齢が逆みたいだね」
そんな2人を見送りながら菜穂は言った。

「ま、いつものことだよ」

「ふうん。なんか楽しそう」

 切符を買ったあと、改札を通ってエレベーターでホームへ上がる。
 とたんにさっきまでは気づかなかった冷たい風が舞い踊り、身をすくめた。

 いつものホームとは逆側に立ち、毎朝立っている場所を無意識に見つめた。

 ほんの少し前までは、いつもと変わらない毎日だった。

 人生には無駄なことは何ひとつない、と言われている。だとしたら、涼子の失踪を堺に知ってしまったいろんな事にも意味があるのだろうか。