「ほーい」
と、素直にうなずいておく。

 そうこうしているうちに見慣れたカーブを曲がった先に、優斗の姿が見えてきた。

 とたんに昨夜の光景が頭をかすめ、胸がトクンと鳴った。

「おっす」

 必要以上に元気な声をかけてしまう自分がいやだ。

 優斗は私を認めると、運転席の2人にあいさつをしてから席に乗り込んだ。

「今回は変なお願いしてしまってすみません」

 さっき私が言ったセリフをそのまま繰り返すものだから、恵美が爆笑している。優斗はキョトンとしながらも、
「なんか変なこと言ったかな」
と私を見るので、
「大丈夫、いつもこういう人だからさ」
と言っておいた。


 いつも朝歩いて通る道を瞬きしている間に車は通り過ぎて行く。流れる景色を見ながら、私は昨日のことはなるべく考えないように努めた。