「そうでもないわよ。でも、恋っていつのまにか始まっているの。それに気づいたときにブレーキをかけるんじゃなく、ぜひ突っ走ってみたらどうかな?」

「ブレーキかけてるつもりはないんですよ。この間も告白しようとしたし」

 そう、あなたの婚約者にね。

「でも、結局しなかった、と」

「はぁ」

「それがブレーキ。次回はノンストップ、アクセル全開で突っ込んじゃいなさい」

「それで大事故になっても?」

「重症になっても、かさぶたが覆うころにはまた違う恋が待っている。それに、傷を乗り越えた人ほど強くなるし、優しくなれるのよ」

 そう言って笑う岩崎を、私は美しいと思った。