自己防衛?
 自分を守る?何から?

「きっと、誰でも好きになるときって幸せなのよね。でも、その想いがつのればつのるほど苦しくなるの。それは見返りを求めてしまうから。自分の想いが風船のようにふくらんでゆくのと、現実とのギャップでどんどん苦しくなる。だから、山本さんは自分の感情をコントロールしてるの。それは、傷つかないように苦しまないようにするためにね。だから、恋を認められない。違う?」

「・・・難しいですね」

「そう、人間は難しいのよ。これは私の偏見かもしれないけれど、山本さんって年のわりに冷静、悪く言えばさめてるように思う時があるのよね」

「それって、よく言われます」
  
 実際、両親にも友だちにも言われるセリフだ。

「きっと、本質は違うのよ。さめた観点で物事をみることで傷つくことから逃げているように見えるわ」

「それって、悲惨ですね」
思わず笑ってしまう。ひどい言いようだと思うが、なんだかサスペンスのクライマックスですべての謎がとけたかのようにスッキリしている自分がいる。