「優斗君はいい弟さんだね」
片付いていない部屋を見回しながら、小浜が誰に言うでもない言い方でつぶやいた。

「バカだけどね」
おどけてみせるのが精一杯だ。

 ふたりになれたうれしさを、「思考回路のミス」と片付けようと必死だ。何度もドアを見ては優斗が早く戻ってくることを祈る。いや、戻らなければいいと思っているのだろうか・・・?

「お待たせ。電話番号教えてもらってきた」
ようやく戻ってきた優斗が、チラシの裏に走り書きした電話番号を見せる。

「それ、どこの?」

「ばあちゃんの家の電話番号。遠くっていったらここくらいしかないしな」

「おばあさんの家なら可能性ありそうなの?」

「あぁ、アネキって昔からばあちゃんっ子だったからさ」

 優斗はさっそく携帯電話を取り出して、メモしてある番号にかけている。メモにある市外局番だけ見ても、そこがけして近くない場所であるということが分かる。