しばらくの沈黙。

 それぞれが考えこんでいるようだ。つい、この間まで普通に会っていたはずの涼子だけがここにいない。

 むしろはじめからいなかったのではないか、とまで思ってしまうほど、知っていたようで何もしらなかった涼子・・・。「涼子がいたのは夢だったのよ」と言われれば、今なら信じてしまうくらい、彼女の痕跡は何もない。

「あ」
突然優斗が顔を上げて叫んだかと思うと、バタバタと部屋を飛び出していく。

 残された私たちは、顔を見合わせてきょとんとするしかない。

「どうしたんだろう?」
小浜と私は同時にそのセリフを口にして、そして気まずく笑う。

 それにしても、いやにさっきから小浜を意識してしまうのは何故だろう。そんなことしている場合じゃないのに、ふたりっきりだと思うだけで息が苦しくなる。そして、その息苦しさは、不快なものではないと本能が教えている・・・。