優斗の部屋は、様々な物が氾濫している言わば『足の踏み場もない』部屋だった。万年床であろう布団の周りには、雑誌やジュースの缶、CDなどが散らばっている。
 それらを押しよけ、なんとか座るスペースを確保すると私たちは腰を降ろした。

「さ、どうやって探そうか」

 あぐらをかいた優斗がまるで刑事のように私たちふたりを交互に見る。

「友だち関係はどうなんだろう?」
小浜が切り出す。

「ないな。期末テストの真っ最中に泊めるやつはいないんじゃないかな。もしそうだったらアネキは別に学校を休む必要ないしな。そのままテスト受けにいけばいいんだし」

 たしかに、いくら友だちでもそこまでするかは疑問だ。優斗の言うように、もしそうなら学校には行くだろう。ということは、遠くにいるのか・・・?

「ひとりで旅行してるとかは?」
ふと思いついて言ってみたが、
「それもない。大体、それじゃあすぐに補導されちまうだろうしな」
と無碍もなく却下されてしまった。

 小浜は、首をかしげて目を閉じて考え込んでいる。眠っているんじゃないだろうな?
 思わず小浜をじいっと見つめてしまう。
 あれ、こんなにかっこよかったっけ?と今更ながら思う。

「僕だったら・・・」ようやく目が開いた小浜の視線とぶつかり、思わず目をそらす。
「僕ならうんと遠くに行きたいな。近くにいるなら家出する意味ないしね」

「遠くか・・・」
優斗もうなずきながら考える。