優斗の家は、どこにでもあるような2階建ての一軒家だった。

「例の親父は今日は仕事らしくていないから安心していいぜ。おふくろはいるだろうけどな」

 そう言いながら玄関を開けたとたんに、その『おふくろ』はそこにいた。

「優斗どこ行ってたのよ。あら、お友だち?」
そう言いながら顔をのぞかせた優斗の母親は、私の想像とは180度違っていた。

 変な言い方だが、家庭内暴力に悩んでいる母親というのは正直もう少しやつれているような気がしたのだが、目の前にいる彼女は、ソバージュの髪に化粧もバッチリしていて、どちらかというと『ケバい』と言ったほうが良さそうな顔だったからだ。

「はじめまして、小浜と申します」

 さすが大人な小浜はすかさず頭を下げてあいさつをした。私もあわてて自己紹介をする。

「よく来てくれたわね。どうぞお入りになって」

 彼女の出してくれたスリッパをはくと、強い香水のにおいがあたりに漂っているのに気づいて、思わず私は眉をひそめてしまう。

「俺の部屋、2階」
そう言いながら、優斗はさっさとすぐ左にある階段を登って行ってしまった。

 私もペコリと頭を下げると、後を追って階段を登る。