幸い小浜とはすぐに連絡がつき、詳しい事情も言わずに駅前のドーナツ屋に呼び出すことに成功した。
 私たちが着くのから遅れて10分、走って店に飛び込んできた小浜は、私がひとりじゃないのを見て驚いていたが、涼子の弟だと紹介すると今度は緊張でガチガチになってしまった。

 狭いテーブルに3人で腰かけ、自己紹介もそぞろに優斗はさっき私に話した内容を小浜に聞かせた。

 店内に流れるノリの良い明るい曲がミスマッチだ、と思いながらも私は黙ってそれを聞いていた。


「と、いうわけなんですよ」
話し終わると、優斗は肩で大きく息をはき、それからドーナツをほおばった。それを見て、私もようやくパンプキンパイに手を伸ばそうと・・・。

「ウグッ」
どこからか変な音が聞こえて、私は伸ばした手を止めて音のするほうを見る。

「ウグッ」
小浜が顔をゆがめて泣いている・・・。

 まただ・・・。父親といい優斗といい、最近は男の泣く姿をよく見る気がする・・・。