「俺は正直、公立に行ったってかまわない。あの親父から離れられるんなら何だってやってやる。親父がどんなふうに俺たちを思ってても関係ねぇ。愛してる?バカなことを言うな、って思うよ。結局、自分の自己満足のために俺たちを私立にいれてるくせに。でも、アネキの望みをかなえてやりたい。アネキがガマンしろって言うなら、俺は耐えてみせるつもり」

 気がつくと視界はゆがみ、驚くほどの速さで涙がこぼれた。なんでこんなに近くにいた優斗や涼子のことを知らなかったのか、と思うと悲しくなる。

「でも、その涼子さんがいなくなったんだよね」

「正直誰よりも驚いているのは親父だろうな。いなくなってから無口で黙り込んでいるしな。アネキはきっと親父の暴力とかに限界点を迎えたんだよ。だからしばらく家を出たくなった。そんなアネキを誰が連れ戻せる?冬休みが終われば帰ってくるなら、好きなようにさせてあげたいんだ」

 私は涙を気づかれないように袖でぬぐうと、
「そっか、ごめんね。私、何も知らないのにエラそうな事言っちゃって」
と伝えた。