しばらく優斗は笑っていたが、
「まぁ、死んでるようなもんだよな」
と笑顔のままで言った。

「どういうこと?亡くなったんじゃないの?」

「あぁ、残念ながらピンピンしてるよ」

 頭の中が高速回転でまわる。あれ?誰が言ったんだっけ、お父さんが亡くなってるっていうのは。そうだ、昨日小浜が言ってたではないか。でも、小浜は涼子から聞いたと言っていたはず。どういうことなのだろう。

 優斗は、そんな私から視線をそらし、「まぁ」と続けた。
「たぶんアネキは認めたくなかったんだろうな、あの親父を。親父は昔は普通の親だった。うん、そう思う。でも、事業を失敗しちまってさ・・・それからだよ変わったのは。小さな工場ながらも所長としてやってた親父は、今じゃさらに小さな土木で雇われの身分になってさ、自分よりもずいぶん年下の上司にエラそうに言われてるらしいぜ」

「そうなんだ」
なんて、アホらしい返しだろう。自分のボキャブラリーのなさが情けなくてたまらない。