ガクンと揺れたあと、電車が動き出した。

 つり革につかまりながら涼子は思い出したかのように
「朝の風景が冬になってた」
と言った。

「え?風景?」
ドア近くの手すりにつかまりながら私は尋ねた。

「そう、毎年このころになると、朝の景色が冬に変わるんだよね」

そういえば、さっき町並みが違って感じたな・・・。

「私も今朝、なんか違うと思ったんですけど、それなのかな」

涼子は窓からの景色に目をうつすと
「そう。具体的には言えないけど、なにかが違ってみえるのよね」
と微笑んだまま言った。

「ふぅん」
私も外の景色を眺めた。