そして碧も、何も言わずにペンを動かしていく。


…と、思ってたけれど。




『…あのさ』

『えっ?』

『海、見に行かね?』



碧は突然そう言い放って、私が返事をする前に、立ち上がった。

だからそのまま従うほかなくて。



私はその背中を、追い掛けた。







辿り着いたのは
夕陽に染められた、夏の海。

堤防に未だにうまく上れない私に、先に上った碧が手を差し伸べてくれた。



『あ…ありがと』



今までなんとも思わなかったのに、
私よりもずっと大きくて力強い手にドキッとした。