私は、香奈を見上げた。
そして唇を噛んで、痛みに耐える。
…ココロがかさかさする。
乾いたココロをぴりっとした鋭い痛みが襲う。
――…うん。私も、そう思ってたよ。
そう笑って答えられたらいいのに。
「向こうにいた頃…あたし、まだ小さかったでしょ?でも小さいながらに、碧兄ちゃんと夏海お姉ちゃんは王子様とお姫様に見えてたんだ」
ほら。
…また、そんなことを言うから。
胸が詰まって、何も答えられなくなる。
「…お姉ちゃん?」
「そう…だね」
何も言わない私の顔を覗き込んできた香奈に、精一杯の笑顔で応えた。
「碧は私にとっての、恋愛対象ではなかったからね」