だけど、これ以上話すこともない。

フェンスからパッと手を離して、私は麻美さんに笑いかけた。


「私、下に戻りますね」



そのまま返事も聞かずに、サンダルを脱いで部屋に戻った。

そしてドアを閉めて、階段を駈け降りようとした時



「…待て」


「きゃあっ」



腕を掴まれて、驚いて階段から転がり落ちそうになった。


「おっと」と碧が、何の躊躇いもなく私を抱くようにして支える。



「……ちょっと…」


私は冷たい視線を、碧に送った。



「…何のつもり?」

「麻美と、何話してたんだよ?」

「別に。報告するような内容じゃない」


腰に添えられた手を振り払って、私は再び階段を降りようとした。


でも捕まった。



「報告しろよ」