ふわふわとしたクマの頭にぎゅっと顔を埋めると、自分でも驚く程に擦れた声が出た。
情けなく、酷く弱々しい。
その次の瞬間、コンコンとノックがあって、私の心臓は思いっきり飛び跳ねた。
「入るよ、お姉ちゃん!」
「…は、入ってこないで…」
裏返った、かつ小さな返答なんて呆気なく無視される。
遠慮なくドアを開けて部屋に入ってきた香奈(かな)は肩を弾ませていて、何かに興奮している様子だった。
…その「何か」は、分かっている。
言わないで、
言わないでよ。
「おねーちゃん、聞いた!?碧兄ちゃん、結婚するって!」
…思いっきり言ってのけてくれた妹のおかげで、私はぬいぐるみを抱き締めたままベッドの上から転がり落ちた。
「ちょ、ちょっ…お姉ちゃん!?」