目。

…顔を上げて、目を見て、ちゃんと話せていた自分があまり思い出せない。



「…よく、あるじゃん」

「は…?」

「妖怪でさ。目を見た人間は石になっちゃう!ってやつ」

「…だから?」


少し呆れた口調で、碧はドアにもたれかかった。

私は壁にもたれたまま、「だから」と続けた。




「…私は碧の目を見ると、石にはならないけど」



石にはならないけど。





「めちゃくちゃに泣きたくなるの」



そう言って、俯くと。

ふいに体がグイッと引き寄せられた。