私を「なっちゃん」と呼ぶ人は、1人しかいない。
「…祐樹(ゆうき)?」
振り向くと立っていたのは、ちょうどさっき餡蜜を私達に運んできたお兄さんだった。
…さっきは全く、気付かなかったけれど。
目を丸くする私と香奈に、彼は「良かったぁー!人違いかと思った。大きくなっちゃって」とオジサンみたいな口調で笑ってみせた。
そういう彼こそ、明るい調子は全く変わっていない。
「祐樹くんだ!久しぶり」
「…香奈、ちゃん?うっわー、お姉ちゃんに似てやっぱり美人になったな。小学生ん時から可愛かったけど」
祐樹は私の一つ上で、碧の親友だった。
碧繋がりで仲良くなった。
なんともいえない懐かしさが込み上げる。
「…元気にしてた?」
「おう。なっちゃんも?…香奈ちゃんは確か、俺の弟と同い年だったよな」