香奈はきょとんとしていたけれど、おじさんはニコニコしたまま「はいよー」と答えた。
タクシーが静かに走り出す。
窓から見える街の雰囲気が、柔らかい。
「初めて来られたんですか?観光で?そんなに見るところないですけどね、いいところですよ」
「友人に会いに来たんです。でもここ、海がすごく綺麗だって聞いたから」
なるほど、と笑うおじさんになんだか懐かしさを感じた。
香奈は物珍しそうに、景色を眺めている。
ここにいた頃はまだ10歳ぐらいだったから、無理もない。
特別田舎だというわけでもないけれど。
私達が今住んでいる場所はやたらビルが多かったことに気付く。