私が知ってる碧。
私だけが知ってる碧があった。


だけどこれからは、私が知らない碧になっていくのかもしれない。

随分長いこと同じ時間を過ごすうちに、互いの色に染まってしまった私達だけど。



…それでも、
碧はきっと彼女の色に染まってく。

自分でも気付かないうちに。


そして私もまた、誰かの色に染まっていくのだろう。




それでいい。
それが、自然なんだ。




「そろそろ戻らないとまずいんじゃない?」

「…そうだな」

「麻美さんが待ってるよ」


私はちょっと背伸びして、碧のネクタイを軽く整えてあげた。
そしてトンと背中を押す。