私は一刻も早く、この場から走り去りたい。



見たくない。
聞きたくない。

帰って来なければ良かった。
こういう雰囲気が、こんなにも辛いなんて思いもしなかった。



碧のタキシード姿も
麻美さんの姿も
見たくない。

声がうまく出ない。



「…っ」


言うなら早い方がいい。
着替えとか財布とか入った紙袋だけ持って、祐樹に出来れば駅まで送ってもらって。



――式が始まる前に、早く。



グッと拳を握り締めて、お母さんに向かい合った。




「…お母さん、私…」


そう口を開いた。