「…またね」


ベージュ色の家に向かって、そっと礼をする。

それと同時に車が走り出した。
祐樹の車にもオーディオが付いていて、香奈が操作し始める。




「色々曲入ってるねー」

「うん。好きなの聞いていーよ」



ハンドルを握りながらそう笑う祐樹に、私は思わず聞き掛けた。



「あの、じゃあスピッ…」


スピッツ。

そう言い掛けて、咄嗟に言葉を呑み込んだ。



胸が熱くなって、
なんかすごく、切なかった。



「…」

「…何?スピッて」

「ううん…なんでもない」


私は微笑んで、運転席に乗り出した体をそっと引いた。