「香奈のもちゃんとあるからね!」
「え…あたしはいいよ…」
ドン引きした表情で手を必死に振る香奈にお構いなく、お母さんは紙袋を探り始める。
らちが明かないので、気を利かせた祐樹が「まあまあ、お母さん!餡蜜食べに行きましょうよ」とうまく丸め込んでくれた。
…助かった。
「え、でも…」
「じゃ、また夜に!お二人さん行ってらっしゃーい」
香奈と二人がかりでお母さんを押さえ込んで、笑顔で手を振ってくれた祐樹に心から感謝した。
碧も「サンキュ。この借りはまた返す」と笑って再びアクセルを踏み込んだ。
ようやく、車がまた走りだす。
「…はぁ…なんかいきなり疲れた……」