慌てて言い返した私に、碧は少し傷付いたような表情で俯いた。

がっかりしたような、拗ねたような。


…昔もよく見せた。
こんな表情。




「わ…わ、わかったからっ」


バタン!

私は慌てて車を一度降りると、前に回って助手席に乗り込んだ。



「さ…最初で最後だからね」

「じゃ、出発」



碧はパッと顔を上げた。
単純なもので、さっきまでの表情は微塵も残っていなかった。


車が緩やかに走り出す。

目的地は知らない。


だけど知らないままでもいい。なんだかそう思えた。