私はケータイを切ると、バッグを肩に掛けて階段を降りた。



「…遅い」


少し不機嫌そうな顔で、玄関に立っている碧。

私は肩をすくめた。



「ごめん」

「…どこ行きたい?」

「あ…考えてなかった」

「あぁ?」



碧は私にデコピンを食らわした。
久々の感触に、思わず目を閉じる。



「ったー……イジメよ、イジメ!」

「やる気ないだろ、お前」

「そんなことっ…」


…ないけど。
その言葉を呑み込んだ私に、碧はやれやれとため息をついてドアを開いた。



「とりあえず行くか」