バッグを用意していた手を止め、そっとケータイに添えた。 目を閉じる。 ――夏の空。 夏の風、夏の匂い。 「夏が終わったら…連れてって欲しいかも」 「…すっげ嬉しい。行きたいとこ考えといて」 「うん」 "夏が終わったら"。 …それまではまだ、 想っていたい人がいる。 その人のことだけで、胸を一杯にしていたい人がいる。