あの頃の碧はいつの間にか男の子から"男"になっていて。
私をいとも簡単に、戸惑わせた。
お父さんの転勤の都合で
私達があの場所を離れてから、もう8年。
もう8年も経ってしまった。
「香奈」
私はそっと立ち上がって、クマをベッドの上に戻した。
「んっ?」
きょとんとした表情の香奈に背を向け、クローゼットを開いてから言う。
「行こうか」
「へ?……何処へ?」
「なんかもう、待ってられないの」
私はボストンバックを取り出して、Tシャツだなんだを詰め込み始めた。
香奈が驚いて、ベッドからぴょこんと飛び降りる。
「ちょ…ほ、本気で!?」