「俺の場合、“表現”っていうより……目の前のものを、自分の絵に閉じ込めたいだけやから」
「……“支配”、みたいな?」
自分で言ったその言葉に、なぜか胸の奥がうずいた。
支配。
じゃあ、あたしのことも……
そのとき
イスに座って足を組み、キャンバスを見つめていた那智が、ふいにあたしを見上げた。
「藍」
那智の指が、つぅっと、あたしの唇をなぞる。
「俺以外の奴の前で、“あんな顔”すんなよ?」
ぞわりと、全身が粟立った。
「……うん……」
那智になら
あたしの全部
支配されてもいい。
あたしは腕を引き寄せられ、床にひざをついた。
イスから降りた那智と、目線の高さが同じになった。