小さく開いたドアのすき間に、自ら体をすべりこませるあたし。
那智は満足げに薄く笑い、鍵を閉める。
部屋に用意された大きなキャンバス。
すき間なく閉じられたカーテン。
なぜかあたしは、自分が生け贄にでもなったような錯覚を起こし、
そしてその妙な錯覚に、酔いそうになった。
「髪、濡れてるやん」
ドライヤーで乾かし足りなかったのか、少し水分を含んだあたしの髪に、那智が指を通す。
普段とは違う、絵のモデルとしてのあたしを見る目つき。
「……ダメだった? ちゃんと乾かした方がいいかな」
「いや。この方がええ」
一瞬、キスされるのかと思うほど、顔が近づいた。
だけど那智はすっと手を離し、
「あそこ座って」
とベッドを指さした。