目の前に迫る那智の顔。


心臓が、皮膚を突き破りそうなほど跳ねる。



「那…、待って」



肩を押し返そうとするけれど、ビクともしない。


うろたえるあたしに、那智はクスリと笑って。



「顔、真っ赤やんけ。何されると思ってるん?」


「え? えっ?」



何、って……そんなの……



「あっ…」



ひるんだあたしの手を那智がつかみ、ふたりの間を遮るものがなくなった。


鼻先が触れそうになり、あたしは必死で顔をそむける。


だけど那智はそれを許してくれなくて。



「ま、待って!
那智っ、ストップっ――」



「そんな権利、お前にない」



ぐっ、と頭の後ろの手に、力がこもる。



唇が触れて


力が抜けた。