悪いよ。
悪いに、決まってんじゃん。
あたしだって本心は那智と同じ。
どんな理由があろうとも、あたし以外の女には指一本、那智に触れさせたくない。
だけど。そんなのおおっぴらに言えないじゃん。
言っちゃいけないじゃん。
なのになんであんたは、そんなに堂々としてんのよ……。
「なぁ」
うつむいたあたしの耳に、那智の声が降ってきた。
「お前は何をそんなにビビってんねん」
「っ、ビビってなんか――」
思わず顔を上げると、間近で視線がぶつかった。
「お前には俺がおるのに」
「……っ」
そんなキレイな瞳で
そんな迷いのない声で
そんなこと言われたらあたし
ダメになる。