「それ、俺のや。触んな」
いやいやいやっ。
先生に対して何言ってんの!?
人のことを“それ”って何!?
ていうか、ていうか!
それより何よりやばいのは。
人前で堂々と、そんな風に……。
「あ、おいっ、那智?」
2年の教室がどよめいた。
那智は窓をひょいと乗り越えて、グラウンドのこちらへと、すたすた向かってくる。
あまりにも平然としているもんだから、先生も怒るタイミングを逃してしまって。
「神木っ、お前は教室で授業中だろっ」
注意するその声には、まったく迫力がなかった。
そして那智も、耳を貸す気はまったくないらしく。
「こいつ、俺が保健室つれて行きます」
そう言って、あたしの肩をつかんだ。