ホイッスルが響き、地面を強く蹴る。
頭の中でうずまく雑音を振り切るように、あたしは加速をつけてハードルを飛び越えていく。
――『藍ちゃん。変なこと聞くけど、あんたたち』
――『付き合いたてのカップルみた~い』
黙れ……。
みんな、うるさい。
黙れ、黙れ、黙れ――。
「桃崎さんっ!?」
横を走っていた生徒が、あたしの名前を叫んだ。
我に返ったあたしは、目の前に迫っていたハードルにやっと気づく。
とっさに飛び越えようとしたけれど間に合わず
ハードルと一緒にバランスを崩し、地面に体を打ち付けた。
「痛……っ」
舞い上がった砂ぼこりが口に入って、ジャリ、と嫌な音を立てた。