周囲の視線も、那智の教室からの視線も、こっちに集中しているのがわかる。
いたたまれなくて、黙って亜美のそばから離れた。
「よし、順番にタイム計るぞー」
先生の号令に合わせ、2列に並んだ生徒たちが次々にハードルを飛び越えて行く。
自分の番が回ってきたあたしは、靴ひもを結び直してスタート地点に立った。
「ん? 桃崎、顔色悪くないか?」
ホイッスルを口から離した先生が、心配そうにあたしを見下ろした。
……言われてみれば、少し目まいがするかもしれない。
さっきのことで頭に血が上っているせいか、それとも、昨夜から何も食べてないせいか。
「休むか?」
「……いえ」
あたしは気にしないことにして、ゴール地点に目をやった。